なんでも発酵!!~ドラマ「JINー仁ー」は,微生物ワールドだ!!

龍馬の最期のまち 京都

発酵オタクの私は,何を見ても発酵と結びつけて考えるクセがあります。

このコーナーは,私,土方が日常のなにげないところでみつけた発酵をテーマに,私の脳内で広がった発酵ワールドを文字におこしたものであります(けっこう自己満足のマニアックな話になることも多々です)。

今日のテーマは,「ドラマ”JINー仁ー”は,微生物ワールドだ!!」です。はい,かなりマニアックなコアな世界になります。

大沢たかおが扮する医大の医師,南方仁。彼が幕末の江戸にタイムスリップして江戸で医術を施すドラマ・・・とだけいうと,なんだか薄っぺらいようなSFファンタジーのような印象を受けるかもしれませんが,私はこのドラマをSFファンタジーだと感じたことは微塵もありません。その世界観は壮大で,発酵オタクのみならず幕末オタクの私には出てくる登場人物がいちいちわかり(笑),その歴史上の実在の登場人物が南方先生と絶妙に絡み合い,史実が緻密に盛り込まれ,南方先生を囲む江戸の人々の愛と南方先生の仁により新たな歴史が紡がれていくストーリーなのであります。

そしてですね!!最初の放映時は,私はまだ発酵オタクではなく,幕末オタクとしてハマっていたのですが,今,あらためて観てみますと,今度は,幕末オタクだけでなく発酵オタクも楽しめる要素が満載だということに気づき,毎回感動の嵐なのです。原作者さん,天才!!間違いなく,私のナンバー1ドラマです。

新撰組ー土方夕暉

幕末オタクっぷり披露・・・新選組入隊!!近藤勇のように握り拳が口に入らないか試す寸前の瞬間(笑)

新撰組ー土方夕暉

新選組ー土方夕暉 「南方仁先生へ 親友の坂本竜馬を暗殺したのは我々ではありませんよ~。私も昔から竜馬ファンですから。京都でお墓参りもしたし,昨年は土佐の桂浜にも行ったし・・・」

最初に登場するのは「コレラ菌」

そこで,仁のどこが微生物ワールドなのかといいますと,まず,登場してくるのがコレラ(江戸ではコロリ)菌コレラは,口から入ったコレラ菌が腸内で増殖し,毒素を産生し発症する病気です。この時代,コレラの特効薬はありません。南方先生は,コレラ患者を隔離し,そこで脱水症状を起こさないように,経口補水液をつくり飲ませ,獲得免疫(抗体)ができるまで持ちこたえさせて治癒をめざします(特効薬がない今の新型コロナ感染症と対処法は変わりありません。コレラの治療も、軽度な場合は今の時代もこれが主だとか)。重傷者には、点滴の方が効果があるとわかっているもののこの時代,まだ点滴は江戸にはありません。

南方先生は,緒方洪庵先生(実在)に点滴をつくるための道具の調達を頼みます。

その頃,坂本龍馬(実在)は自分にできることとして、人を集めてコレラによる死者たちのための墓穴を掘ります。疲れたうんぬん文句を言う墓穴掘りの働き手たちを競わせてやる気を起こさせる龍馬。このシーンはきっと・・・龍馬が若かりし頃のエピソードから持ってきたのね?地元土佐の河川工事の現場監督を任され、働き手たちを3手に分けて褒美を出すとか何とか言って競わせ、尻を叩かずとも各々同じ組の仲間で協力しながらてきぱきと働き、他の現場よりも龍馬の現場が早く終わったという「人を動かす能力に長けている龍馬」のエピソード。龍馬好きならきっとみなそう思ったはず(笑)。ちょっと話がそれてしまいました・・・幕末オタクがつい漏れ出てしまう(笑)。

話を戻して、幕府勝海舟(実在)の働きかけにより、コレラ対策に乗り出します。幕府の力南方先生が言うコレラの感染予防のための方法を広くふれまわらせたのです。そうして、江戸の街は、徐々にコレラの流行がおさまっていきました。

 

続いて「梅毒菌」~ペニシリン誕生への道!!

さて,次に南方先生が立ち向かうのは,梅毒です。悪さするのは梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌(以下、梅毒菌)。性交渉で移る病気ですね(坂本龍馬梅毒だったのではないかと言われていますが,妻のお竜は長生きしているので,違うのかな?)。ですから,吉原の花魁・女郎たちは,常に梅毒の恐怖に怯えて生きているのです。

南方先生は,梅毒末期の夕霧という花魁を診察することになります。今では,梅毒抗生物質ペニシリンで治せますが,この時代にはまだ存在していません。南方先生は,ペニシリンを自作できないかと模索しはじめます。ペニシリンは,青カビの一種です。青カビとして思い出す発酵食品は,ブルーチーズですね。でもペニシリン青カビブルーチーズ青カビの種類とは異なります(ペニシリンの青カビペニシリウム・クリソゲナムブルーチーズの青カビはペニシリウム・ロックフォルティなど。マニアックですみませ~ん。ちなみにカマンベールチーズの白カビは,ペニシリウム・カマンベルティ。実は、白く見えるけど青カビなの)。

ペニシリン梅毒を治すとはどういうことかというと梅毒菌という病原菌青カビという菌にやっつけてもらおうという仕組みです。人間の身体にとって悪い菌違う菌で制すということになります。南方先生は,江戸の仲間たちとあちこちから青カビを集めます。ミカンやらご飯やらありとあらゆるものに生えた青カビです。ここが江戸でなくイタリアならゴルゴンゾーラ,イギリスならスティルトン,フランスならロックフォールが登場したかもしれませんね。そして,ついにペニシリンをつくることに成功します(感動!!)。残念ながら夕霧は救えなかったものの,その後の梅毒治療に一石を投じることとなりました(物語の中での話ですよ)。

 

なんと「ヤマサ醤油7代目」登場

そして次は,火傷治療のための皮膚移植で感染症を防ぐために大量のペニシリンが必要になったり,肺血症治療のために(肺血症も細菌などによる感染が原因)もっと薬効の強いペニシリンが必要になったりしてきます。よりよい能力を持った青カビをどうやったら早くに大量に培養できるのか。そこで手をさしのべたのが,浜口儀兵衛(実在)です。誰?って,そう,ヤマサ醤油の7代目なのであります。醤油づくりには,麹菌・乳酸菌・酵母菌が関わっています。を扱う技術は醤油職人さんたちはお手のものです。職人さんたちの手を借りて,南方先生たちは,薬効の強いペニシリンを大量につくることができるようになります。実際のところ,この時代に日本にペニシリンは存在しませんが,ヤマサ醤油7代目浜口儀兵衛は,本当に医学の発展に支援を惜しまなかった人なのだそうです。原作者あっぱれ!!

 

最終話では「緑膿菌」~ペニシリンが効かない!!

最終話で登場するのは,緑膿菌です。南方先生がお慕いする咲さんが緑膿症に倒れ,生死をさまよいます。緑膿菌には残念ながらペニシリンは効きません。効くのは違う抗生物質であるホスミシン(商品名)です。この時代にはまだ存在しません。咲さんの身体の中に獲得免疫(抗体)ができて緑膿菌をやっつけるのを待つしか術はないのです。咲さんに獲得免疫(抗体)ができるのが先か,体力尽きて死ぬのが先かです。この時代の西洋医術ではどうにもできないと悟った南方先生は,東洋医学に精通している医師に咲さんの体力を持たせるための漢方薬の処方を頼むくらいしかできませんでした(その後,別の方法を思いつくのですが)。ラストは,何度観ても号泣です。でも,けっして暗い話ではないのですよ。

 

今回も,かなりのマニアックネタになってしまいました。ついついね・・・。こうやって文字におこすと,医療とか菌とか幕末に詳しい人しか楽しめないドラマなのでは?と思うかもしれませんが,ぜんぜんそんなことなく,誰もが絶対楽しめるドラマです!!まだ観ていない方はぜひ!!私は何度観ても感動し,新たな情報を見つけてはニンマリし,そして号泣。もはや泣く場面は,パブロフの犬状態となっていますが(笑)。

現在,コロナウイルスの治療に従事している方々,治療薬やワクチン開発に尽力している方々に敬意を表します。

(2020年8月にUPしたものでしたが、間違いに気づいたところがありましたので修正し、再アップ致しました)

 

龍馬の最期のまち 京都

南方仁先生の親友(笑)である坂本龍馬が奔走し,最期を迎えたまちでもある京都で龍馬の足跡をたどる(早朝は誰もいなくてよいよ~♪)。こうして旅ができる世の中が戻ってきますように。