なんでも発酵!!~腐らないのはなぜ?本場イタリアからの「バーギズのパネトーネ」

バギーズのパネトーネ イタリア

発酵オタクの私は,何を見ても発酵と結びつけて考えるクセがあります。

このコーナーは,私,土方が日常のなにげないところでみつけた発酵をテーマに,私の脳内で広がった発酵ワールドを文字におこしたものであります(けっこう自己満足のマニアックな話になることも多々です)。

今日のテーマは,「パネトーネはなぜ腐らないのか?」です。

バギーズのパネトーネ イタリア

バーギズ「パネトーネ」のリーフレットを読みながら・・・

 

衝撃的な美味しさのバーギズ「パネトーネ」

パネトーネ,イタリアのクリスマスに食べる伝統菓子で,日本でもだいぶメジャーになってきましたね。日本のクリスマスに浸透してきたのはドイツのシュトーレンの方が先かもしれませんが,私は,両方とも大の好物です。生クリームやチョコレートで,スポンジをデコレーションした一般的なクリスマスケーキよりずっとずっと好きです。子どもは喜ばないですけどね,見た目も地味ですし。大人になるとだんだん,この美味しさがわかってきて,こちらの方がよくなるんですよね~。シュトーレンは,今は,日本でも本場仕込みの作り方で日本製でも美味しい物がたくさん出回るようになりましたが,パネトーネは,まだ日本製では,美味しい物と巡り会えていないような・・・。知っている方がいましたらぜひ教えて下さい!!

3年ほど前、イタリアに菓子の研修に行ったとき,ミラノパネトーネを見つけたのだけれど,買い損ねて後悔・・・。でも,それから1年後,出会いました!本場イタリアの美味しいパネトーネに,日本で!!私の講座に来て下さっていたHさんに,「先生,これ美味しいからどうぞ」と箱でいただいたのです。Hさんは,食のライターをされていた方で,本当にいろんな美味しい物を知っている方なんですよね。家に帰って空けると,ほんわり良い香り(乳酸菌が醸し出す香りも)・・・。で,一口食べてみた!!!なんじゃ,こりゃっ!!と衝撃が走りましたよ。ななな,なにこの美味しいさ~と。あのね,すごーくいい原材料を使って,こだわりを持ってていねいに作られていることが,味と香りだけで伝わってきたの!!今まで食べてきたパンや菓子の中で,こんなに素材そのものの味(香りや食感も含む)で感動したことないですよ。見た目のきれいさに感動することはあってもね,パネトーネの場合は見た目地味でしょ~。味だけでこんなに勝負できるものってあるんだ!!と,感激でした。それはイタリアのバーギズ社のものでした。

昨シーズンは,思い出して,クリスマスの少し前に,ネットで注文しようと思ったら,すでに完売。そんな話を食べ物の趣味が合う相棒に熱く話しましたら,今シーズンは,クリスマス前に,なんと家に届きました!!注文してくれていたのです!!感動!!

クリスマスに一緒に半分食べて,また,あとで楽しもうと,涼しめのスペースに置き,それを昨日食べました。

バギーズのパネトーネ イタリア

本場イタリア バーギズ「パネトーネ」 本当は円形です・・・半分はクリスマスに食べちゃったので・・・

パネトーネがカビない(腐らない)理由

え?カビ生えてないの?と思いますよね。きっとイタリアで発送したのは11月。それから3ヶ月以上は経過しているのに・・・。それが生えていないのですよ。ああ,保存料とかの添加物たくさんなのね?スーパーに売っている菓子パンみたいに,と普通思うでしょ?あれ,怖いですよね~,カビ生えない大手会社の大量生産のパン。カビ菌も近寄りたくない食べ物ってことですよね。保存料殺菌料まみれでカビ菌が繁殖できないということは,つまり,食べると今度は,人間の腸内のよい菌もダメにしてしまうということです。だから,ふだん私はスーパーの菓子パンはめったに買わないです。あ,ガチガチカタブツ食品添加物排除人間というわけでもないですよ。買わなくても別に不便を感じないから(食事はパンよりご飯派。菓子は好きだけど,別に菓子パンでなくてよい)であって,出来る範囲で,信頼できるものを摂り入れる生活をしています。

パネトーネの話に戻りますね。材料を見てみると,小麦粉・干しぶどう・砂糖漬けオレンジ・天然酵母・バター・卵黄・甘蔗糖・食塩・バニラです。どこにも,人工の添加物は書かれていません。イタリアの基準では書かなくてよいから?いえ,それも違います。日本で売るときは,日本の基準で表記されるはずです。

 

カビない理由は天然酵母「パネトーネ種」にあり

では,なぜ,こんなに長期間腐らないのか。それは,材料の天然酵母にあります。天然酵母とは,自然に存在する酵母菌ということです。日本で大量生産のパンで使われているものは,数多く存在する自然の酵母菌の中からパンに適した膨らみやすい酵母菌を選び,培養して増やしたものです。これを日本ではイーストと呼び,自然に存在する酵母菌を天然酵母と呼んで区別するのが一般的です。言葉としては,本当は,酵母菌(日本語)=イースト(英語)ですよ。

よく,自然派志向もどきの方で,この培養されてつくられたイーストのほうを悪者扱いする方がいますが,これは,けっして身体に悪い物ではありません。イーストはパン作りの精鋭たち天然酵母は個性豊かな面白みのあるやつと思ってくれるとわかりやすいかな。ちなみにイーストではなく,イーストフード(イーストのエサということです。短時間に大量にパン生地をつくることができます。生地改良剤とも言います)というものですと,これは食品添加物であり,確かに身体に良くない物も含まれている場合があります。

 

カビない理由①・・・パネトーネは酸性

パネトーネに使われる天然酵母は,パネトーネ種というものです。パネトーネは,菓子名をさしますが,パネトーネ種というのは天然酵母の種類の名前です。最近,販売されているパンのパッケージにも「パネトーネ種使用」と書かれているものけっこう見かけるようになりましたね。

パネトーネ種の特徴は,酵母菌に乳酸菌も混ざり混んでいるということです。膨らませる働きをするのは,主に酵母菌のほうで,乳酸菌は糖を食べて乳酸を出す菌ですから,生地を酸性にします。だからできあがったものには,酸味がありますし,若干,香りもヨーグルトを思わせます。

このパネトーネ種,乳酸という酸を出すので,生地を酸性にするのですが,ここがミソです。牛乳よりもヨーグルトの方が日持ちしますよね。それは,乳酸菌が出した乳酸という酸が雑菌をよせつけないバリアの役目を果たすからです。パネトーネも同じです。乳酸菌が乳酸という酸を出すので,バリアになります。

 

カビない理由②・・・パネトーネは水分が少ない

パネトーネ種でつくられたパンや菓子は,一般的な酵母菌でつくられたパンや菓子に比べて水分量が少なくなります。

水分が多いと,水分が好きなカビなどの雑菌が繁殖してしまいますが,少ないと繁殖できません。干し野菜がカビにくく(腐りにくく)保存性が高いのと同じように,パネトーネも,水分が少ないのでカビにくいのです。

・・・でもね,だからといって,バーギズのパネトーネは,ぜんぜんパサパサしてないのですよ。神業ですね。

 

バギーズのパネトーネ イタリア

本場イタリア バギーズ「パネトーネ」 パネトーネは,イタリアの伝統的なパン菓子です

 

いや~美味しかったな~。

ということで,パネトーネがカビない理由でした。理由はこの2つだけでなく,複数からみあっているはずですが・・・。

いつかシュトーレンがカビない理由も解説します。

 

あ,最後に・・・EU諸国の菓子は,添加物が少なく,安全です。日本人は,「日本のものは安全,外国のものは危険」という刷り込みがありますが,そうとも限りません。

EU諸国は,日本より食品添加物の基準が厳しいです。日本では当たり前に使われているマーガリンやショートニングも規制している国が多いです。カルディなどに行ったら,外国産の菓子のパッケージの表示を見てみると面白いですよ。

私は,イタリアの菓子が大好きなので,よく買いま~す。

 

発酵研究家/発酵翻訳家/発酵料理人:土方夕暉(札幌)~発酵への探究心と発酵愛は北海道No.1!と自負(^^)/