今日は,2月3日。立春。今日から春だ~!!ただいまの札幌マイナス11℃ですけど。
立春もうれしいですが,発酵オタクの私にとって大事なのは,乳酸菌の日だ!!ということです。2月3日,23,にーさん・・・にゅうさん・・・乳酸(笑)。それなら毎月23日を乳酸菌の日にした方がよいのでは?と思うけど。そうしたらヨーグルトメーカーさん喜びそうね。毎月30日は味噌の日なんだし。
さて,乳酸菌のネタはいっぱいあるけれど,何を紹介しましょうか。ヨーグルト?・・・普通すぎ。自家製クリームチーズ?・・・今から作るには生クリームないし,一日で完成しない。 あ!乳酸菌が関わっている発酵茶!!阿波晩茶・碁石茶・石鎚黒茶・バタバタ茶・・・どれにしようかなと発酵専用物置き場を探っていたら,目に入ったのが,日本酒「竹鶴」。あ・・・。これからお茶淹れて写真撮って飲むより,この時間なら日本酒だ!!と何の迷いもなく日本酒紹介に心変わり。
しかしですね,すっかり日本酒を飲む気分になってしまっておりますが,実は私が持っているこの「竹鶴」は,乳酸菌による発酵はさせていないはずです。生酛とも山廃とも書いていないし。竹鶴酒造はそう,私の大好きなニッカの創業者である竹鶴政孝さんのご実家としても有名ですね。現在は,酵母無添加で,昔ながらの木桶仕込みも復活させて生酛づくりにも力をいれています。でも,今日飲むこれはそれではない。でも,美味しいの。冷やで飲みます。冷やして飲むのが冷やではありませんよ。常温で飲むのが冷や。冷やしたものは,冷酒です。冷蔵庫のない時代は,熱燗か常温です。なので,熱い方に対して常温の方が冷やになるのです。
さて,乳酸菌の話をするための日本酒・・・,乳酸菌による乳酸のすっぱさを感じた酒・・・記憶をたどる・・・あ!土田イニシャル「F」。ボトルもステキだから写真撮影した記憶がある・・・データを探す!!見つけた!!コレです↓
美しいでしょ!このデザイン。これは,札幌の有名酒店であります「銘酒の裕多加」の熊田理恵さんに「面白いお酒」のチョイスをお願いしてすすめていただいたお酒です。私の尊敬する理恵さんは,お酒づくりのプロデュースもしていまして,酒造りの現場にも連れて行ってもらったことがあります。私の日本酒講座にもゲスト講師として来ていただいたことがあるんですよ。
さて,本題の乳酸菌と日本酒づくりのお話をしましょうか。
腐敗防止のための乳酸菌
お酒は基本,炭水化物(糖)を含む原料と酵母菌でつくられます。いちばん単純なのが,ぶどう果汁と酵母菌でできるお酒,そうワインです(マロラクティック発酵はちょっと置いておいて)。日本酒はと言いますと,原料は米というのはわかりますね,で,これに酵母菌を加えればできる・・・とはならないのです。日本酒の場合は,最初に麹菌,次に乳酸菌,そして万を持して酵母菌の出番となる訳です。麹菌という言葉も出しちゃいましたが,今日は,話がややこしくなるので,その話はしません。さて,日本酒づくりにおいて乳酸菌がどんな働きをするのか?こたえは,腐敗防止です。もちろん出来るお酒の味にも影響を及ぼしますが,いちばんの理由は腐敗防止なのです。作る過程で雑菌が入って駄目になってしまうのを防止するのです。仕組みはこうです。日本酒づくりにおける乳酸菌というのは,米からできた糖を食べて乳酸という酸を出します。酸というのはすっぱいです。そして,強い酸というのは,雑菌を寄せつけません。だから,牛乳よりもヨーグルトの方が腐りにくいし(乳酸),酢も一生腐らないし(酢酸),胃酸は食道から入ってきた雑菌を殺してくれますね。日本酒づくりにおいて乳酸は,雑菌を寄せ付けないバリアの役割を果たします。今,乳酸菌でなく,乳酸と言いました。そう,実は,日本酒は,乳酸菌を入れなくても,乳酸菌が生み出した乳酸を入れれば実は出来ちゃいます。腐敗防止のためだけなら乳酸でよいのです。乳酸は液体で売っていますので,それを入れればよいのです。その方法を速醸造(そくじょうづくり)といいます。現在は,大半がこの方法でつくられています。楽ですし,安定した品質が保てるからです。これに対して昔ながらの乳酸菌を入れる方法を①生酛造(きもとつくり)や②山廃造(やまはいつくり)と言います。昔は乳酸は売ってないですからね。
生酛と山廃
①生酛造
木桶に米・米麹・水を入れて擂り潰して酛というものを造ります。山卸(やまおろし)もしくは酛摺りという作業です。この作業で蔵の壁や天井,空気中にいる乳酸菌を取り込むのです。長時間の重労働です。この方法で造る酒を生酛造と言います。
②山廃造
しかし,この重労働の山卸(酛摺り)をしなくても「ちょっと作業工程を工夫すれば,乳酸菌が入ってくれるぞ」ということがわかり,山卸を廃止して造ったのが山廃造です。
生酛造も山廃造も自然由来の乳酸菌を取り入れて造られることには間違いありませんし,安定と速さの速醸造に比べて,ものすごくコントロールが難しく手間がかかります。
土田イニシャル「F」
さて,土田酒造のイニシャル「F」です。
土田酒造さんは,2012年に全量が純米の山廃になりました・・・ってすごいなあと思っていたら,なんと今は,全量生酛になっている!!蔵にすみつく乳酸菌や酵母菌などの微生物の力を最大限に引き出そうと,果敢にチャレンジしている蔵なのです。
このイニシャル「F」もなかなかユニークでして,何も言われずに出されたら,日本酒だとわからないかもしれないと思うほどぶっ飛んでいます。乳酸菌の爽やかな酸味があります。一般的な日本酒より酸味は強いです。白ワインのような・・・でも,それと違うのはもっとコクがあるというか・・・。なんと表現したら良いのかわかりません。それくらいユニークです。この写真,2020年の3月のものでした。これ以上の味の記憶はたどれません,許して(謝)。
ということで,乳酸菌の日にちなんだ日本酒造りにおける乳酸菌のお話でした。