なんでも発酵!!~「麒麟がくる」信長と光秀を偲んで・・・豆味噌で追悼

豆味噌 八丁味噌 岡崎城 本能寺の変 織田信長 明智光秀 徳川家康 発酵 hacco 土方夕暉

発酵オタクの私は,何を見ても発酵と結びつけて考えるクセがあります。

このコーナーは,私,土方が日常のなにげないところでみつけた発酵をテーマに,私の脳内で広がった発酵ワールドを文字におこしたものであります(けっこう自己満足のマニアックな話になることも多々です)。

今日のテーマは,NHK大河「麒麟がくる」最終回を終えて,気になったあの辺りの味噌文化の話を・・・。けっこう長くなりますので,「麒麟がくる」好きや,「味噌文化」に興味ある方以外は,無理かも・・・。

「麒麟がくる」のラスト~私は勝手に腑に落ちた

昨日,最終回を迎えたNHK大河「麒麟がくる」。本能寺の変,そして,秀吉による光秀の討伐がどのように描かれるのか興味深く観ていました。本能寺で,攻めてきたのが光秀だと知った信長の「是非も無し」の台詞と少し嬉しそうですらあるあの表情に,心揺さぶられ,泣きました(信長役の染谷将太さん,こんなにすばらしい俳優さんだったとは,失礼ながら存じておりませんでした。『聖☆おにいさん』のブッダ役くらいでしか私は観たことがなかったので。ちなみにキリスト役は松山ケンイチさん。ブッダとキリストが一つのこたつに入ってダラダラしているあのゆるい感じ好きです)。そして,結局,戦のない世の中にしか来ないという麒麟は,来ないでドラマは終わってしまった。だって本能寺の変のあと,まだ戦は続くではないか・・・。

でもね,光秀が秀吉に討たれるシーンは描かれなかったのです。そして最後は,馬に乗って走る光秀のシーンで終わる。そう,光秀生存説に含みを持たせた描かれ方をしてくれたのです。生存説のひとつに,徳川家康の側近である南光坊天海(天台宗の僧侶)光秀だったのではというものがあります。幕府をひらくにあたり,江戸の土地をすすめたのはその天海で,家康のアドバイザー的な役割を果たしていたようです。

ドラマの中で光秀と家康が後半,近しくなっていたのはその伏線だったのではと思わせます。光秀が信長を討ったことにより,その後,秀吉が天下を統一し,頃合いを見計らって家康が台頭して戦のない時代をつくったのだとしたら,その立役者は光秀になります。そして,そう,秀光は家康と一緒に戦のない世の中をつくった・・・「麒麟がくる世の中」です。そう解釈するのが私的にはいちばん腑に落ちました。

 

戦国時代の味噌文化

さて,戦国時代の味噌文化のお話をします。なぜなら,戦ばかりの世の中で,兵糧として重宝されたのが味噌だからです。味噌は,腐りにくいですし,そして,塩分が高いので少しの量でご飯(米・粟・稗)も進むので,兵糧としてうってつけの発酵食品です。大事なタンパク源にもなりますしね。戦国武将伊達政宗は,軍用味噌を自給しようと考え,城下に日本初の味噌工場「御塩噌蔵(おえんそぐら・ごえんそぐら)」をつくりました。伊達の味噌は腐らないと評判だったらしいですよ(想像ですが,塩分濃度が高めなのと,熟成期間が長いので水分が少ないのが理由かな?)。伊達政宗の味噌は,そう,米味噌です。今も仙台味噌は有名です。

青葉城 伊達政宗 御塩噌蔵 hacco 土方夕暉 札幌 

この城下にかつて御塩噌蔵がありました(発酵旅行2018 仙台「青葉城跡」にて)

青葉城 伊達政宗 御塩噌蔵 hacco 土方夕暉 札幌 

仙台で購入の「佐々重」の味噌(発酵旅行2018春 仙台にて) 見ての通り,仙台の味噌は赤味噌ですね。熟成期間が長いと赤くなります。米味噌ですよ。

では,戦国時代の信長や光秀,家康のあのあたりの味噌はというと,豆味噌になります。ちなみに,京都の味噌は西京味噌で有名な米味噌です。西京味噌は,熟成期間が短く,たっぷりと米麹を使った甘くて塩分控えめの上品な色の薄い白味噌です。西の都は,どこまでも品よくいこうとするのですなあ・・・(もっともこの当時は,西京味噌とは呼ばれていませんよ。東京に対しての西京という語ですから)。

米味噌やら豆味噌というワードが出てきましたが,どう違うのかといいますと・・・

 

米味噌・麦味噌・豆味噌の違い

日本の味噌の種類を,原材料で分けたなら,米味噌・麦味噌・豆味噌になります。麦味噌は九州豆味噌は東海地方,そしてそれ以外の地はほぼ米味噌文化です。私も米味噌で育ってきました。

「米味噌は,米麹+大豆」「麦味噌は,麦麹+大豆」「豆味噌は,豆麹」でつくられます。

米味噌と麦味噌には,原材料の米や麦の主成分がデンプンなので,糖分が多く含まれているということになります(デンプンというのは,ブドウ糖がつながったものなのです)。大豆に対して,米麹や麦麹を増やせば増やすほど甘い味噌が出来上がります。

それに対して,豆味噌は,原材料に米や麦が含まれないので,糖分がほとんど含まれないことになります。大豆の主成分はタンパク質です。タンパク質はアミノ酸がつながってできているので,発酵によりそれが分解されて,個々のアミノ酸になります。ですから豆味噌はアミノ酸の塊のような味噌なのです。アミノ酸旨味成分でもあります!!

整理すると「米味噌や麦味噌」には甘味が多く,「豆味噌」には旨味が多いということになります。

 

豆味噌文化

さて,昨日の「麒麟がくる」では,信長の死が,実に印象的でしたので,信長を偲んで,今日は,信長にちなんだものを食べようと思い,その土地の味噌である豆味噌を使った味噌煮込みうどんを作りました。信長といえば,尾張(現・愛知)の大名という印象が強いですよね。あの地方はもちろん豆味噌文化です。光秀は美濃(現・岐阜)ですね。美濃も豆味噌文化だから,ちょうどよいですね。しかし,家にある豆味噌は「八丁味噌」です。八丁味噌は,家康が生まれた岡崎城から西へ8丁目の地「8丁」でつくられた豆味噌です。昔の言い方ですと岡崎は三河(現・愛知)です。知らなかったのですが,今でも,愛知の方たちは,住んでいるところを尾張と三河で分けて考え,相手側を敵とみなしているらしく,他県のものから「愛知人はいつまで戦国時代なの?」と突っ込まれるらしいですね。違っていたらごめんなさい。

まあ,でも,家康(三河)が戦のない時代をつくったのだから,今日は家康(三河)さんの八丁味噌で,信長(尾張)さんにもがまんしてもらいましょう。明智さんは異論はないはずです。

八丁味噌について

ちなみに,岡崎城から八丁のところで八丁味噌を作っている蔵元は,「まるや」さんと「カクキュー」さんの2軒だけです。細い道を隔ててお隣さん同士で昔から切磋琢磨しているんですよ。味の違いは,「まるや」は,まるみがあり,「カクキュー」は渋みが強めです。どちらがよいかは,好き好きですね。買うときの参考に「まるやはまるい」で覚えておけばよいですね。北海道で見かけるのは,圧倒的に「カクキュー」さんのほうです。生産量が「カクキュー」さんの方が多いので流通量も多くなりますよね。

岡崎八丁味噌

岡崎 八丁味噌の蔵元「まるや」さんにて(発酵旅行2018秋) この石の重しは,阪神淡路大震災でも崩れなかったそうです。職人技で積み上げていきます。

岡崎 徳川家康 八丁味噌 hacco 土方夕暉 札幌

岡崎 八丁味噌の蔵元「カクキュー」さんにて本場の味噌煮込みうどんをいただきました(発酵旅行2018秋)

豆味噌 八丁味噌 岡崎城 本能寺の変 織田信長 明智光秀 徳川家康 発酵 hacco 土方夕暉

本日,味噌煮込みうどんに使用した「カクキュー」さんの八丁味噌

味噌文化の違い

米味噌文化で育った人は,豆味噌になじめない方も多いようです。私は,誰かが「美味しい」というものは,自分も美味しいと感じるはずだと思って食べるたちなので,大丈夫です。でも,まあ,米味噌に身体がなじんでいますから,毎日のお味噌汁は米味噌がいいのは間違いないのですが。どちらが美味しいとかでなく,それは,習慣ですよ。

豆味噌のよさは,米味噌にはない,旨み・渋み・酸味にあるわけですから,それを生かした料理をするということも大切だと思います。ビーフシチューの隠し味とかにも使えるんですよ。アミノ酸たっぷりで身体にもよいですしね。健康オタクで長寿の家康は,江戸にこの八丁味噌を取り寄せて「5菜3根」の味噌汁を毎日食していたそうですよ。

 

文化の違いを愉しむ

ことのほか美味しく,八丁味噌の味噌煮込みうどんができました。しっかりした味の料理に米の旨味を感じる純米酒が合うと思います。

豆味噌 八丁味噌 岡崎城 本能寺の変 織田信長 明智光秀 徳川家康 発酵 hacco 土方夕暉

味噌煮込みうどん

 

豆味噌 八丁味噌 岡崎城 本能寺の変 織田信長 明智光秀 徳川家康 発酵 hacco 土方夕暉

味噌煮込みうどん

味噌づくりに関わる菌

あ,菌オタクの私としては,大事なことを言い忘れていました。味噌は,麹菌・乳酸菌・酵母菌による発酵でつくられます。そして,豆味噌は,蒸した「団子」にしてそこに麹をふりかけて豆麹をつくります。蒸した「粒」に麹菌を振りかけて麹をつくる米味噌や麦味噌と製法が異なります。団子の中は空気がない状態ですので,空気嫌いな乳酸菌が好む状況です。ですから,豆味噌は,他の味噌より乳酸菌が多いそうですよ。乳酸菌の酸やアミノ酸による酸で,豆味噌には酸っぱさもあるのですね。豆味噌は,煮込んだほうがよい味噌です。煮込むことで酸はまろやかになり,美味しくなります。

 

さて,本能寺の変が終わったから,三谷幸喜さんの「清洲会議」でも読みかえしましょうか(笑)。確か,織田信長の切腹ぼやきシーンで,ちょっとお腹に刃物をあてて「イタタタッ・・・」みたいなのからはじまるんじゃなかったかな(笑)。